槌の音と皿を数える音がする佐武氏屋敷
どんな伝承か
横山の乗越の内、土手小路にある佐武氏の屋敷は、文政から明治の初めまで三十年ほど佐武氏が住んだ家である。庭に苧を植えると夜ごとその中で槌の音が聞こえ、以前その苧畑で変死した人がいたためといわれて、以後は苧を植えなくなった。台所では夜半に皿を数える音がするともいう。また昔、吉川広家が今田以十を手討ちにした後、この宅地に以十の霊を祀る小祠が置かれていた。ここに住んだ熊谷仁右衛門が別れた妾を厠で絞め殺した話も伝わり、その後の住人も相次いで亡くなったので、不幸の続く宅地と言われたという。
原典より
横山乗越し内、土手小路に佐武氏屋敷あり。—— 岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年))
『岩邑怪談録』は、岩国藩士広瀬喜尚の怪談録に後人の増補と続録を合わせ、岩国徴古館が昭和五十一年に発行した資料集である。岩国周辺で人々が出会った化物・大坊主・生首・怪火・狐狸・天狗倒し・幽霊などの話を収め、藤田葆が編んだ『岩国沿革志』のうちの二冊を底本に、なるべく原文のまま新字に改めて載せる。広瀬の本録に、今田純一の追加、藤田の続怪談録と実事談・変死、静間密の付録五話を続け、巻末に語注を付す。