竹垣から突き出る馬の足と玄関で踊る坊主
どんな伝承か
錦見裏丁の上にある安達十郎右衛門の宅は、以前から門の左右の囲いがみな寒竹の垣であった。世間では、雨が降って暗い夜にはこの垣の破れから馬の足が突然に出るといい、そうした夜に通る人は少なかった。十郎右衛門の盛んな頃には絶えてない話で、父祖の代のことであろうという。慶長以前、この地には寺があり墓などもあったと伝える。また草野谷口の右角の宅には文政年頃から粟屋孫兵衛が住んだ。古い藁葺きで玄関の板敷はひどく破損していた。雨の夜には玄関に坊主が出て、破れ衣で踊りを踊ったという。ここも昔は寺地であったと言い伝えられている。
原典より
錦見裏丁の上、安達氏前方、右ヱ門宅は従前より門の左右の囲ひ、皆カン竹の垣なりし。—— 岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年))
『岩邑怪談録』は、岩国藩士広瀬喜尚の怪談録に後人の増補と続録を合わせ、岩国徴古館が昭和五十一年に発行した資料集である。岩国周辺で人々が出会った化物・大坊主・生首・怪火・狐狸・天狗倒し・幽霊などの話を収め、藤田葆が編んだ『岩国沿革志』のうちの二冊を底本に、なるべく原文のまま新字に改めて載せる。広瀬の本録に、今田純一の追加、藤田の続怪談録と実事談・変死、静間密の付録五話を続け、巻末に語注を付す。