遊女ゆえに狂気とされた欠落者
どんな伝承か
享保十七年、木賊田村での一件である。ある男が村から欠落し、時折帰ってきては親に歯向かい、殺してやると言って追い回した。自分の妻を追い出せばおとなしく家に帰ると言うが、どうやら郡山の遊女を家に入れたいらしい、と内聞に訴え出られた。訴えには「狂気に仕られ候て」「狂気の様に申し」といった言い方が用いられている。男は捕えられ、手鎖と胴縄をかけられたうえで指籠入れに処せられた。乱心そのものではないが、あまりに常軌を逸した言動を「乱心同様」と非難した事例の一つである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情(昼田源四郎・1985年(昭和60年))
『疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情』は、精神科医の昼田源四郎が昭和六十年に著した、江戸時代の村の医療を描く本である。奥州守山領(現・福島県郡山市の一部)の『御用留帳』を主な史料に、村人の暮らし、医師と医道修行、疫病と祈禱、湯治、乱心と狐憑き、受刑者の治療、行倒れの継ぎ送り、間引きと養育手当などを、書き下した原文を引いて跡づける。序と凡例、全八章、あとがき、注、索引からなり、発行所はみすず書房である。