失明した者が選んだ針医と瞽女の道
どんな伝承か
守山領の『御用留帳』には、眼をわずらって失明したため、男は針医に、女は瞽女やワカ・口寄せになりたいと願い出た記事がときどき見える。瞽女は三味線を弾き歌をうたって銭を乞い歩く女芸人であり、ワカや口寄せは神がかりとなって死霊の言葉を語る巫女である。当時の眼科の水準は低く、眼疾から失明する者は少なくなかった。目の光を失った者が身を立てる道は限られており、こうした芸能や神事の職はその数少ない受け皿だった。願い出には藩の許可が要り、その記録が帳面に残された。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情(昼田源四郎・1985年(昭和60年))
『疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情』は、精神科医の昼田源四郎が昭和六十年に著した、江戸時代の村の医療を描く本である。奥州守山領(現・福島県郡山市の一部)の『御用留帳』を主な史料に、村人の暮らし、医師と医道修行、疫病と祈禱、湯治、乱心と狐憑き、受刑者の治療、行倒れの継ぎ送り、間引きと養育手当などを、書き下した原文を引いて跡づける。序と凡例、全八章、あとがき、注、索引からなり、発行所はみすず書房である。