失明した者が選んだ針医と瞽女の道
どんな伝承か
守山領の『御用留帳』には、眼をわずらって失明したため、男は針医に、女は瞽女やワカ・口寄せになりたいと願い出た記事がときどき見える。瞽女は三味線を弾き歌をうたって銭を乞い歩く女芸人であり、ワカや口寄せは神がかりとなって死霊の言葉を語る巫女である。当時の眼科の水準は低く、眼疾から失明する者は少なくなかった。目の光を失った者が身を立てる道は限られており、こうした芸能や神事の職はその数少ない受け皿だった。願い出には藩の許可が要り、その記録が帳面に残された。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情(昼田源四郎・昭和中期(推定))
本書は江戸時代の陸奥奥州守山藩領における『御用留帳』を史料とした、近世農村の医療事情と心霊現象の研究である。狐憑きや物付きなどの精神疾患が、祈禱や指籠入れ(座敷牢)によって治療された実例を14件詳述する。天明・天保の飢饉や流行疫病(疱瘡、麻疹、コレラ等)への対応と並行して、乱心者の社会的処遇、責任能力の鑑別問題、欠落(逃亡)との区別が論じられている。