膝の痛みを釜崎の湯に託した願書
どんな伝承か
寛政三年五月、守山領の平沢平太夫が湯治の願書を差し出した。三、四年前から脚気で両膝が痛んで難儀していたが、昨年からとりわけ再発し、半道も歩けば痛みだして領内の廻村にも差し支えるという。この病には仙台の釜崎へ入湯するのがよいと、矢部佑伯ほかの医師たちが申し聞かせたので、御用の透きを見合わせて湯治に出たい、出入りの日数は二十七日ほど下し置かれたい、というのである。湯治には願書を出して許可を受けてから出かける決まりで、医師はこの病にはどこの湯がよいと具体的に行先を指示した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情(昼田源四郎・1985年(昭和60年))
『疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情』は、精神科医の昼田源四郎が昭和六十年に著した、江戸時代の村の医療を描く本である。奥州守山領(現・福島県郡山市の一部)の『御用留帳』を主な史料に、村人の暮らし、医師と医道修行、疫病と祈禱、湯治、乱心と狐憑き、受刑者の治療、行倒れの継ぎ送り、間引きと養育手当などを、書き下した原文を引いて跡づける。序と凡例、全八章、あとがき、注、索引からなり、発行所はみすず書房である。