実のならぬなすびと稲生屋敷の祟り
どんな伝承か
稲生平太郎が一か月にわたる化け物騒ぎに見舞われた三次の稲生屋敷について、地元の歴史にくわしい人々は、怪異のあと屋敷の近くの畑ではなすびが花を咲かせても実を結ばないとうわさされたと伝える。平太郎があまりに落ち着いていたため見過ごされがちだが、隣に住む相撲の師匠の権八をはじめ、怪異に出会って病に倒れた者も少なくなかったという。比熊山のふもとの屋敷跡は、いまは法務局など公共の施設が並ぶ一画になっていて、そこだけ民家が妙に少ない。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪伝説奇聞(東雅夫・2005年(平成17年))
『妖怪伝説奇聞』は、東雅夫が二〇〇五年に学習研究社から刊行した妖怪伝承地の探訪記である。稲生物怪録の木槌、クダン、牛鬼、塵輪、ナメラスジ、八幡の藪知らず、鬼の骨、蛇骨、鍋島の怪猫、児啼爺などを追い、中国・四国・九州ほか各地の寺社や旧家を訪ねて遺物と伝承を確かめる。月刊誌「ムー」の連載「日本伝説紀行」の十二章を三つのカラーグラビアで区切り、巻末に草双紙『鍋島猫騒動』の復刻を添える。