魔王物語 - 稲生平太郎と大熊山の妖怪
どんな伝承か
寛延年間、備後国三次郡布努村に住む十六歳の少年武士・稲生平太郎は、藩の武芸師範・吉田次郎に三年間武芸を学び「稲生の小天狗」と呼ばれていた。ある五月雨の夜、隣家の主人で元力士の権八とともに、三次郡西方にそびえる大熊山の妖怪に会ってみようと鬮引きをし、平太郎が三次殿の塚へ赴くことになった。塚のそばには俗に天狗杉と呼ばれる大杉があり、平太郎は蓑笠を着け草鞋を履いて夜道を大熊山へと向かった。この一件をきっかけに平太郎の家では大入道の襲来やポルターガイスト現象が相次いだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(田中貢太郎・河出文庫・1985年(昭和60年))
『日本の怪談』は、田中貢太郎の怪談を昭和四十五年桃源社刊『日本怪談全集』から抜き出した文庫本で、昭和六十年十二月に河出書房新社から発行された。「宝蔵の短刀」「八人みさきの話」など土佐の城下や村の話をはじめ、江戸・京・吉野などを舞台にした幽霊・狐狸・猿・魔物の話を、会話の多い語り口で収める。二十七篇の後に尾崎秀樹の解説を付し、高知に生まれた作者の生涯と怪談・妖異譚への傾倒をたどっている。