亡き夫と息子を呼び続けて霊能を得た田面木のおばば
どんな伝承か
八戸の田面木に住む老婆は『田面木のおばば』と呼ばれるカミサマで、ひどい人嫌いのうえ、最後まで自分の名を明かさなかった。取材に来た中岡俊哉に語ったところでは、夫は戦争で死に、息子も病気で亡くして、ひとり残された。悲しみから抜け出そうと、朝も夜も、亡き夫と息子にどうか姿を見せてほしいと祈り続けるうち、願いがかない、死者の姿を見て言葉を交わせるようになった。十年ほど前のことで、力はその後ますます強まり、いまでは招いた死者を自分の体に乗り移らせ、その口で話をさせるまでになったという。
原典より
老婆は、悲しみの苦痛からたちなおるため、朝に夜に、亡夫と息子にその姿を見せてくれるように頼んだ。—— 私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ)
『私は幽霊を見た――現代怪談実話傑作選』は、東雅夫が編んだ怪談実話のアンソロジーで、メディアファクトリーのMF文庫ダ・ヴィンチの一冊である。平山蘆江・火野葦平・佐藤春夫・徳川夢声・遠藤周作・柴田錬三郎から石原慎太郎・新倉イワオ・稲川淳二まで、作家や文化人が自ら見聞きした幽霊や怪異を書いた文章を集める。目次には二十三篇と編者解説が並び、水木しげる・山田野理夫・桝井寿郎の座談「怪談詮議」や中岡俊哉「イタコの謎を追う」の抄録も含む。