田面木のおばばが降ろした三島の霊
どんな伝承か
青森県八戸市田面木に住む“カミサマ”は「田面木のおばば」と呼ばれ、たいへんな人嫌いで、気が向かなければ誰の頼みでも招霊はしないことで知られていた。著者が三島由紀夫の霊を呼んでもらうと、おばばは腹部を押さえ、額から油汗を垂らして苦しそうにもだえはじめた。ふつうは読経から一、二分で降りる霊が、五分以上かかったのである。理由を尋ねると「腹の痛みがひどいのと、首がないからだ、こんなおれをよぶなんてひどすぎるぞ」と荒々しく答えた。自らの行動の評価については、憂国の心のある人間には正しく評価されていると語ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ)
『私は幽霊を見た――現代怪談実話傑作選』は、東雅夫が編んだ怪談実話のアンソロジーで、メディアファクトリーのMF文庫ダ・ヴィンチの一冊である。平山蘆江・火野葦平・佐藤春夫・徳川夢声・遠藤周作・柴田錬三郎から石原慎太郎・新倉イワオ・稲川淳二まで、作家や文化人が自ら見聞きした幽霊や怪異を書いた文章を集める。目次には二十三篇と編者解説が並び、水木しげる・山田野理夫・桝井寿郎の座談「怪談詮議」や中岡俊哉「イタコの謎を追う」の抄録も含む。