玄斉橋で出会った車の六人の小坊主
どんな伝承か
昭和五十五年十月、語り手が夫と義姉と次男の四人で親類の栗拾いに招かれた帰り、木曽川に架かる玄斉橋を渡ろうとすると向こうから車が来た。小さな車から中年の女が茸を両手いっぱいに持って降り、川べりへ下りる道はないかと尋ねる。車内には顔も形もそっくりな子どもが六人、騒ぎもせずに乗っていた。女の車が去ると、目をぎらつかせていた義姉が、茸を採ろうと物の怪に憑かれたように林へ駆け込んで姿を消した。夜に隣組で捜し、崖を下りる道を知る近所の老人が、川端の大石のそばでぼんやりしている義姉を連れ戻した。本人はけろりとしていたが、翌日は体の痛みにうめいたという。
原典より
私と主人と義姉と次男と四人で親類から栗拾いにおいでと招待を受けての帰り道、木曽川に架っている玄斉橋を渡ろうとした時、向側から車がくるので待っていると、まことに小さい車の中から中年の女の人が、こんなに茸があったと手にいっぱ…—— 現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。