谷中町の門へ消えた五十銭の客
どんな伝承か
昭和七年九月の新聞が伝えた話。ある運転手が雨の深夜、青山墓地付近で二十二、三歳の娘を下谷まで乗せたが、谷中町で「ここが家です」と料金も払わず門の内へ消えた。家人に請求すると「亡き娘の一周忌で供養している」と一円を渡され、運転手は気味悪さに交番へ駆け込んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。