豪徳寺駅手前の踏切に立つ三姉妹
どんな伝承か
小田急電鉄の井上昭彦運転手は、七月はじめのある夜、新宿から多摩川へ向かう急行の運転台にいた。梅ヶ丘を過ぎ、豪徳寺駅へさしかかろうという頃、前方の無人踏切の上に白いブラウスの人影が三つ、ふんわり動いた。叫んでブレーキを引き、電車は踏切を十メートルほど過ぎて急停止したが、車輪の下にも周囲にも誰もいない。車庫で話すと先輩は、また出たか、と言った。二十四年の秋にそこで未婚の姉妹が轢死し、十二年後の春には残る末娘も同じ場所で命を落としていた。井上は数日高熱にうなされた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。