声だけが聞こえる果てしない野原
どんな伝承か
野原のようなところを、どこまでもどんどん向こうへ歩いていってしまう人があったという。声はするけれども姿は見えず、人がトヤトヤとしゃべる音ばかりが聞こえて、気がつけば自分ひとりきり、果てしなく広い野原に立っている。そこへ寺の僧や地蔵が現れ、「おまえがこんなところへ来る所ではないから、帰れ帰れ」と言われたという。一方こちらの世では、誰かがその者の名を一所懸命に呼んでいる。その声にはっと気がついて、戻ってくるのだと語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。