麦まきの夜空を駆けた白い馬車
どんな伝承か
児玉郡生野の話。明治初年の秋、権二郎の家では出来事が重なって麦蒔きの時期を逃していた。夫婦は一寝入りして目を覚ました時分に畑へ出て、星明かりのうちに耕しはじめたが、いつまでも夜が明けない。畑の畦で一息入れていると、どこからともなく鈴の音が響いてきた。上空を見上げると、金色に輝く光の輪の中を、二頭立ての白い馬車が一人の女を乗せて南から北へ走っていき、赤城山の彼方へ消えた。権二郎は狐狸に化かされたかと妻の頭を殴った。無事に麦蒔きを終えた妻は、その夜から患い、三日病んだきりで死んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。