墓を掘る母と波の上の死んだ息子
どんな伝承か
山梨県南都留郡下吉田町(現・富士吉田市)での話。下吉田町のある青年が友だちと富士山麓の湖で泳いで溺れた。すぐ引き上げて手当てをしたが間に合わなかった。ふしぎに体は生きているように暖かく、駆けつけた母親は死体を一晩抱いて寝た。翌日もまだ暖かみが残っていたので、母親は埋葬をひどく嫌がった。その夜、母親は墓地へ行き、泣きながら墓を手で掘り返して「ボコの泣き声が聞える」と言った。棺の蓋をとらせるとまだ死体は暖かかった。次の夜も母親は土に耳をあて、確かにボコが泣いていると言って泣いた。ある日は浜にうずくまり、波の上に死んだ子が見えると言い張った。その母親はまもなく死んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。