火の見櫓を上る下駄の音
どんな伝承か
小樽に長橋というところがあり、その先には火葬場がある。火葬場に入る角のところに北消防署の火の見櫓が立っていた。消防士が監視に上がると、姿は見えないのに誰かが下駄の音をさせて後ろから上ってくる。頂上まで来ると音は止まる。誰が上っても同じことが起こるので、消防士は誰も登らなくなった。二人で上っても音がする。新聞に出たので、鬼刑事と呼ばれる柔道の猛者が樫の棒で待ち伏せて叩いたが手ごたえがない。僧を呼んで拝んでもらい、櫓の下を掘ると白骨死体が二つ出た。昔そこは川で、心中した男女が発見されぬまま埋め立てられたらしい。供養すると音は消えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。