背の墨と掌の名号を持って生まれた子
どんな伝承か
珠洲郡のある村に、子どもが決まって早死にする家があった。次こそ長生きするようにと、亡くなった子の背に長い線を墨で引いて棺に納めたところ、次に生まれた女の子の背に墨のような紋があり、この子は丈夫に育って六十五で世を去ったという。近くの内浦町にも似た話がある。浄土真宗の松岡寺で生まれて間もない子が死に、右の掌に南無阿弥陀仏と書いて葬った。十三日目に町内で生まれた男の子の掌に同じ文字が読み取れ、洗っても落ちない。住職は我が子に書いた字に違いないと驚いたが引き取ることはかなわず、シキビの葉を煎じた汁で洗うよう教え、字はきれいに消えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。