赤子の内股に浮いた弔いの文字
どんな伝承か
昭和十三年、足立区千住の大工梅島作爾は、四十五になっても独り身の変わり者、山崎竹二と銭湯で知り合った。右肩に三つ並ぶ黒子を腕のよい証しだと褒めたのが縁だった。翌年、名古屋から戻った梅島が土産を持って長屋を訪ねると、山崎は俯せに死んでいた。心臓麻痺で身寄りもなく、梅島が葬式を出して谷中の寺へ葬る。やがて大阪の呉服屋幸田哲夫が訪ねてきた。授かった男児の内股に、東京千住の梅島故人の霊を弔う、と読める青痣があるという。筆跡は梅島のものだった。墓を建てて供養すると痣は消えた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。