堀切橋で膝を斬った三寸の蟷螂
どんな伝承か
荒川放水路の堀切橋で語られた怪異の一つ。宇喜田から魚の行商に出ていた娘が、ある夜千住へ若芽を仕入れに行き、その帰りに橋向こうの知人を訪ねようと、めったに渡らぬ堀切橋にさしかかった。三分の一ほど進んだところで、どたんと音がして橋の下から何かが飛び上がった。娘は恐ろしさに夢中で逃げたが、知人宅で前掛けが血に染まっているのに気づく。見ると膝頭が斜に二寸ばかり斬られ、背負った籠の朝顔には斧も羽も血だらけの三寸ほどの蟷螂が止まっていた。蟷螂に斬られたのだと言われたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。