下関で女たちが手渡す石炭の籠
どんな伝承か
大正九年四月、シベリア出兵中の本隊へ派遣されることになった大津歩兵第九連隊の新兵たちは、浦潮での赤衛軍のガイダ事件を受け、警備任務のため四月七日に大津を出発し、広島経由で九日夕に下関で御用船に乗船した。下関では女性たちが縄梯子を使い、後ろ向きに並んでリレー方式で石炭を運び上げる作業が行われた。夕暗に出港した御用船は玄海灘で高波と冷雨に見舞われ、船は大きく揺れて苦しい船旅になったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。