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袖を引いて消えた亡き旗本の子

所在地東京都文京区
年代伝承(口承)
登場栗原、子の霊に袖を引かれた体験者
出典耳嚢(みみぶくろ)

どんな伝承か

著者のもとへ出入りする栗原という男は小日向に住み、近所の旗本の屋敷へいつも出入りして奥まで通されるほど親しくしていた。その家に五歳になる愛らしい男の子がいて、栗原はかわいがり、訪ねるたびに土産を持っていった。しばらく無沙汰をしていると、屋敷から今晩はぜひ来てほしいと使いがあった。上がって勝手の廊下へ行くと、いつものように子が出てきて袖を引き、奥へ連れていく。勝手に屏風が立てられ、何かしめやかな様子なので尋ねようとした途端、子の姿は消えた。驚いて案内を請うと、その子は昨夜病で亡くなり、葬送の支度をしているところだった。栗原はひどく恐れおののいたという。

原典より

驚きて案内を乞ひ入れば、件の小児昨夜病死せしとて葬送の支度なりし故、栗原大に恐れ驚きしとなり。—— 耳嚢(みみぶくろ)(根岸鎮衛・江戸随筆・怪異・1809年(文化6年)) より引用
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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

耳嚢(みみぶくろ)(根岸鎮衛・江戸随筆・怪異・1809年(文化6年))

『耳嚢(みみぶくろ)』は、根岸鎮衛(守信)が勤めの合間に古老や訪ねて来た人から聞いた話を書き留め、佐渡在勤のころからまとめ直して文化六年仲秋に結びを付した随筆である。武家・町人の逸話や奇談に加え、狐・狸・幽霊・妖獣などの怪異、羽蟻や虫歯・ものもらいを治めるまじない、薬の秘法を、一項ずつ題を掲げて記す。この本文は著者の自叙と巻之一から巻之十まで(巻之四を欠く)の抜粋で、巻末に著者の結びと『耳嚢副言』の一部を置く。

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