母子離れて相見る
どんな伝承か
数年前、ある女性は関節炎で両足が利かなくなり、長野赤十字病院に入院していた。快方に向かって十五日に退院できるはずだったが、迎えに来る兄の仕事が忙しく、退院は延びた。故郷のことばかり思って眠れずにいたその夜、まどろむうちに体が宙に浮かび、見知らぬ村の上を飛んで故郷の庭先に降り立った。家の中の母を見て思わず呼びかけたところで付き添いの伯母に起こされ、気づけば病室のベッドの上で、時計は二時過ぎだった。三日後に帰郷すると、母は、十五日の夜二時過ぎに末の娘を連れて便所へ行った折、束髪に太縞の羽織を着た娘が目の前に立ち、手を出しかけてふっと消えたと泣きながら語った。時刻も姿も寸分違わなかったという。
原典より
さうして、ふわ/\と飛んで行つたかと思ふと、もう故郷の庭先に降りて居りました。—— 心霊現象と死後の生活(梶天真・心霊研究・死後の生活) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊現象と死後の生活(梶天真・心霊研究・死後の生活)
『心霊現象と死後の生活』は、梶天真が諸家の所説を集めて編んだ心霊研究の書である。欧米の心霊研究の動向、死後の生存と輪廻転生、幽霊・神憑り・交霊・精神感応などの現象を、松村介石、森田正馬、小熊虎之助らの説や、雑誌『婦人世界』『変態心理』に載った論を引いて紹介する。四篇に分けて各篇を小見出しで細かく区切り、霊媒ユーサピアの実験、霊能の贋物の種明かし、占い棒による水脈探しなどの事例も載せる。