残る難物十人に猛犬をけしかけ十手や杖で打ちつけると
どんな伝承か
荒療治で大部分は正気に返ったが、残る十人ほどは難物で、足軽が数頭の猛犬をけしかけると半死半生になった。十手や杖で打ちつけ、七ツ時(午後四時頃)になって、最も狂暴な五人がついに白状した。『我らは阿波の祖父山の内、国政村梅の宮に住む狸で、当村の百姓が同輩の長丞に悪感情を抱くのを見て、犬神と称して人々を惑わした。神職や僧侶の祈祷は平気だったが、お上の御威光による成敗には敵う力がない。赦免くだされば阿波へ立ち帰る』と願い出たという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
二つの怪奇な心霊現象(浅野和三郎・1940年(昭和15年))
『二つの怪奇な心霊現象』は、浅野和三郎が著し、心霊科学研究会が昭和十五年に発行した心霊現象の記録で、昭和二十七年に再版された。前篇は土佐国長岡郡豊永郷岩原村で村人数十人が憑きものに狂乱し、藩の役人が祈禱や鉄砲で鎮めた事件を、嘉永六年に野島通玄が記した記録から紹介する。後篇は山梨県北巨摩郡穂坂村の旧家の娘かね代に先祖横森市兵衛の霊が懸かり、盗まれた不動明王の掛軸が戻った因縁を、著者の調査と甲州訪問記を添えて述べる。