殺人鬼横行(熊による暴力・殺人・火付け)
どんな伝承か
大正期に千葉県香取郡一帯を騒がせた鬼熊事件の顛末を伝える話である。荷馬車挽きの熊は、女はなをめぐる痴情と重なる借金に苦しんでいた。肥料商の齋藤軍司とは、開墾地に売り込んだ干鰯(ほしか)の代金を使い込んだうえ、薪代の精算をめぐっても諍いを起こし、逢うたびに殴りかかると言い放つほどこじれた。女がまたも逃亡すると熊はいよいよ狂乱し、事件は火付けや刃傷沙汰へと泥沼化していったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集)
『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎が明治・大正の世に起きた事件や奇談を読み物に仕立てた実話集である。明治十一年に相模の真土村で起きた松木騒動、大正十四年に千葉の久賀村で起きた鬼熊の事件など、一揆・殺人・盗みの事件、遺言状をめぐる話、奇人の話、幕末の暗殺を、関係者の話や記録をもとに描く。各話は章を立てた読み物で、松木騒動には筆者が大正六年に現地を訪ねて聞いた補遺を付す。