彰義隊へ走る旅費に窮した三人の若侍
どんな伝承か
上野に彰義隊が立てこもったころ、下総の銚子にあった前橋藩の陣屋では、江戸へ抜け出して彰義隊に加わろうとする者が出ていた。日ごろ仲のよい若侍三人もその気になったが、困ったのは旅費の出どころだった。借りれば企てが知れてしまうと考えた三人は、ある夜、野に出て相談し、人に知らせず金をこしらえるには押し込みしかないと決めた。目をつけたのは、なじみ客として出入りしている引手茶屋で、金をため込んでいるらしいという。決行はその晩とし、知り合いの料理屋で遅くまで遊んで世間が寝静まるのを待つことにした。
原典より
彰義隊が上野に立て籠った際のことであつた。—— 奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集)
『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎が幕末から大正にかけての事件や奇談を読み物に仕立てた作品集である。明治十一年に相模の真土村で起きた松木騒動、大正十五年に千葉の久賀村一帯で起きた鬼熊の事件、香取郡の連続殺人、伊賀上野の破獄、京都の天誅などを、記録や関係者の話をもとに描き、松木騒動には筆者が大正六年に現地を訪ねた補遺を付す。播磨屋橋遺聞のように、筆者自身が創作と断る話も含む。