高須に並ぶ津島家と菅澤家の邸宅
どんな伝承か
二本松から松本屋の角を折れて坂を下ると、高須の里に出る。水田を挟んだ左右の丘の裾に家々が散らばり、その中に二軒の大きな邸宅が並んでいた。手前が津島徳三郎、奥が菅澤重雄の家である。津島は佐原銀行の重役で憲政会千葉支部の重鎮、菅澤は多額納税議員で政友会の重鎮で、激しい千葉県下の党争はこの土地から生まれていた。憲政会の鶴澤が代議士に当選したとき、資格に欠けるところを突いて失格させたのも菅澤だったという。菅澤家の隣には小学校もあった。熊が心を寄せるようになった女の家も、この土地にあった。
原典より
激しい千葉縣下の黨爭の酵母は此處で發酵されるのであった。—— 奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集)
『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎が幕末から大正にかけての事件や奇談を読み物に仕立てた作品集である。明治十一年に相模の真土村で起きた松木騒動、大正十五年に千葉の久賀村一帯で起きた鬼熊の事件、香取郡の連続殺人、伊賀上野の破獄、京都の天誅などを、記録や関係者の話をもとに描き、松木騒動には筆者が大正六年に現地を訪ねた補遺を付す。播磨屋橋遺聞のように、筆者自身が創作と断る話も含む。