鶏物語(人語を話す鶏)
どんな伝承か
市ヶ谷佐内坂に住む旗本の用人が、主家の費えを作るため平塚の領地に赴き、村役人の家に草鞋を脱いだ。翌日、庭先で蟷螂が蜻蛉を捕らえ、それを見つけた雌鶏が蟷螂を啄んで雛に与える様子を見て、用人は妙な胸騒ぎを覚える。その夜、隣室で寝ていた村役人夫婦が、明日は客への馳走のためその鶏を殺そうと話すのを聞いてしまい、さらに竹縁の下の巣から、母鶏が雛たちに「明日は自分が殺されるから用心せよ」と語りかける人語まで耳にした。恐ろしくなった用人は翌日、鶏を雛ごと譲り受けて江戸へは帰らず、山中の聖のもとに身を寄せ、そのまま数十年を過ごしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ)
『日本の怪談(二)』は、田中貢太郎が著した怪談・奇談の短編集である。著者の郷里である土佐の高岡郡や長岡郡の山村の話を多く含み、越中の放生津や立山、利根川の河口、館林の城下、江戸の碑文谷などを舞台に、蟹や蛇の怪、鮭の祟り、山姑、亡者宿、切支丹の処刑にまつわる怪異を物語の形で書く。「蟹の怪」から「鶏物語」まで二十八篇を収め、友人から聞いた話として語る篇もある。