濡れ衣で身を投げた菊野のみさき
どんな伝承か
高知県幡多郡清水町松尾の漁師・出張友助の女房花美が、簪をなくした咎を近所の紺屋の女房菊野に着せた。菊野は草履を投げ込まれる細工までされて世間から疎まれ、清水へ出たまま松尾の鼻の浪打ち際に溺死体となって上がった。まもなく花美は高熱にうなされ「あたしが悪かった」と口走って狂死し、その家では病人が絶えなかった。神官猿田が弓祈禱をすると「みさきが乗った」と叫んで悶絶した。以後、松尾の鼻に上がる溺死人は決まって松尾部落の者ばかりで、菊野の執念が祟ったと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。