殺された息子が甥に生まれ変わる
どんな伝承か
明治三十七年八月十七日、大阪府中河内郡弥力村近江堂の農家の三男・清治郎は、隣村南蛇草村の盆踊りを見物中、誤って部落民の足を踏んだことから撲り倒され、七人がかりで野井戸に投げ込まれ命を落とした。犯人らは証拠不十分で釈放され、清治郎の母は悲しみのあまり阿弥陀如来に祈願を重ねたところ、その年の十一月十二日夜、夢に清治郎が現れ「観音様が家へ帰してくれます」と告げた。翌年、清治郎の葬式とちょうど同じ時刻に甥が生まれ、成長するにつれ清治郎そっくりの容貌になったという。一方、加害者七人は次々に変死を遂げた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。