署長が相次いで急死する浦戸署
どんな伝承か
高知市の表玄関にあたる浦戸署で、昭和十二年、快男児として慕われた署長中村留吉が、ちょっとした病から盲腸周囲炎をこじらせてあっけなく亡くなった。数日前まで元気だったので誰も本気にしなかったが、やがて奇怪な噂が広まった。水上署の時代から歴代署長のうち三人までが同じような死に方をしているというのである。古老の中には、署のあたりは昔竹藪で狐や狸の巣だったのを明治年間に容赦なく切り開いたため、住みかを失った狐狸が警察を恨んで署長に祟るのだと言う者もあれば、すぐ近くの西孕の大膳様を淫祠として取り潰した祟りだと言う者もいた。そこで浦戸署では悪魔払いの家祈禱を行うことになったと、高知新聞が冗談まじりに報じた。
原典より
* 地蔵屋敷 (198)* 警察の宿直室 (199)* 古碑の怪異 (200)* 桜の間の大入道 (202)* 手を洗う亡者 (204)* 本堂へ来た女 (207)* ブロッケンの幽霊 (21…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。