僧侶の頭上に写った先妻の顔
どんな伝承か
保土ヶ谷のある寺の僧侶が写真を撮る必要があって、横浜へ行き写真屋に入ってレンズの前に立つと、写真師は機械に故障ができたといって撮影を中止した。仕方なく次の写真屋へ行っても、その次でもやはり同じように断られた。業を煮やして詰問すると、写真師は「あなたはこうしてみると一人だが、黒い布を被ってみると後ろへ女の顔が出て来る」と言った。交渉の結果、警官を呼んでその手で撮影してもらうと、僧侶の頭の上に髪を振り乱した女が坐っていた。警察は奇怪至極として内務省へ報告した。写真の女は僧侶の先妻で、死ぬ際に後妻をもらうなと遺言したのを守らなかったための怪異であった。
原典より
* 幽霊写真 (348)* 死児の写真 (350)* 写真に映った登山姿 (350)* 御嶽登山の記念写真 (351)* 鏡に映る女の顔 (352)* 堀切橋の怪異 (355)* 室の中を歩く…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。