鉦の音とともに生まれた男の子
どんな伝承か
牧野二郎の死後、未亡人の腹の子について二つの見立てが分かれた。霊媒の三田光一は透視で女と見たが、二郎の霊は男と告げた。出産の時期も、産科医と産婆が六月中旬と見たのに対し、三田は生まれる子は二郎の身代わりだから百か日にあたる七月六日だと言い切った。七月六日、頭取から電報が届く。前夜、百か日の逮夜に男子が生まれ、母子ともに無事だという。牧野家では二郎の位牌に供物を供え、善仁寺の住職を招いて読経を頼んだ。住職が着座して鉦を一つ打った、その響きと同時に男の子が生まれたのである。時刻は午後六時だった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊と神秘世界(福来友吉・1932年(昭和7年))
『心霊と神秘世界』は、文学博士福来友吉が著し、昭和七年に人文書院から発行された心霊研究と仏教思想の書である。御船千鶴子・長尾夫人・三田光一らの透視と念写をはじめ、霊の幻化、念動、物質化など国内外の心霊現象を実験記録とともに論じ、後半では自我・神秘世界・霊と生命を真言密教や華厳の教えによって説く。全五編からなり、この本文は昭和五十七年に心交社が出した復刻版で、梅原正紀・井村宏次らの「解説研究編」を付している。