背後の子供の声で三途の川から生還
どんな伝承か
霧の川の上を飛びながら向こう岸へ渡ろうとしていた佐藤国男さんは、背後から行かないでと父を呼ぶ子供の声を聞き、はっと我に返った。当時、上の娘は小学四年生、下の息子は一歳半ほどで、まだ言葉を話せないはずだったが、思い返すと二人の声が入り交じっていたように感じるという。飛んでいる最中で、振り向くことはできなかった。意識が戻ったとき目の前にのぞき込む女性の顔があり、一瞬天使かと思ったが、よく見ると病室によく来てくれる看護学校の生徒だった。それは七日目ごろのことで、彼はすぐにまた意識を失ったという。
原典より
だけど渡れないでいるうちに、後ろから子供の声で、『お父さん、行かないで』というのが聞こえたんです。—— 証言・臨死体験(立花隆・臨死体験・ノンフィクション・1996年(平成8年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
証言・臨死体験(立花隆・臨死体験・ノンフィクション・1996年(平成8年))
『証言・臨死体験』は、立花隆が文藝春秋の雑誌『クレア』に連載し、一九九六年に単行本として刊行した臨死体験の証言集である。俳優の安田伸、作家の水上勉、彗星探索家の木内鶴彦、プロレスラーの大仁田厚、映画監督の羽仁進など、病気や事故で死の淵に臨んだ二十三人の体験を、本人や家族からの聞き取りで記録する。各章は人物の略歴と前置きに続けて問答形式の談話を載せ、本人の著書や手記からの引用も交える。