三尺坊来臨の夜に減った桶の水
どんな伝承か
十月二十一日の夜、才一郎は夢で、秋葉山大権現の御附にするので十二月朔日に御山へ連れて行くと告げられた。才一郎の願いで家の者にも三尺坊の姿を拝ませることが許され、二十八日の夜、清らかな水を桶に入れて八つ脚の台に載せ、竹で仕切った内へは入るなとの指示どおりに支度した。灯明も燎もともさずに待ち、父の才亮や泰治夫婦、その子らや清見寺隠居の禅師が地に伏して神の姿を拝み、涙にくれた。座敷で真言を唱えていると、才一郎が今晩の土産だと割松一把を持って来た。見ると二斗ほどあった桶の水がわずか二合ほどに減っていたが、辺りにこぼれた跡は少しもなかったという。
原典より
皆々座敷へ帰り一心に御真言を唱へ居候へば、才一郎入来、最早御立に成候処御参詣の御三方の傍に御座候とて割松一把持参り、…—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。