下女に見えない侍女との買い物
どんな伝承か
十二日の夜、春が十八郷の日蓮僧の祭を見に下女を連れて出かけると、途中で長壁大神の侍女と行き合い、二人は肩を並べてさまざまに語らいながら歩いた。侍女は小間物店に寄って、銀色の根掛けや大縮緬の飾り、花簪などを買って春に与えた。ところが連れの下女には侍女の姿がまったく見えず、春が自分で代金を払って買い物をしているようにしか見えなかったという。神々の宴があった日の夜の出来事である。
原典より
此夜春女十八郷なる日蓮僧の祭を見に行かんとて、下女を供に連て出行しに、途にて長壁大神の侍女来りあひて、これより侍女と春女と肩を並て、種々語り合ひ行くに、下女には少しも知れざりしとぞ。—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。