五十鈴川で狂死の相を告げた老人
どんな伝承か
文政十一年、井上正鉄は二十五歳のとき、かねての宿願だった伊勢両皇大神宮参拝を志して伊勢路へ向かった。参宮三日目、五十鈴川の清流で手を洗い口をすすいでいると、不思議な老人が現れ「後年狂死の相が顕れているから謹んで戒めなさい」と警告した。この人物こそ、名高い観相家・水野南北であった。正鉄は自らの狂死の相を実感し、感謝してその場で南北の弟子にしてほしいと願い出た。南北の教えは粗食少食と麁服を守る荒行であったが、半年ほど続けるうちに不思議な効験を得たという。
原典より
参宮三日に及んだとき、たまたま五十鈴川の清流に手を洗い、口を漱いでいた瞬間、一老人の姿が目に映った。—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。