衝立岩で宙吊りの遺体を銃撃
どんな伝承か
谷川岳は記録を取り始めた昭和六年以来、八百人を超す遭難死者を出し、一つの山としては世界最多とされる。昭和三十五年九月には、一ノ倉沢の衝立岩の前面で二人の登山者がザイルで宙づりになったまま死亡した。垂直の岩場のため通常の方法では遺体を収容できないと判断され、自衛隊の狙撃手が軽機関銃などでザイルを撃って切断し、遺体を落下させるという痛ましい経過をたどった。著者はこの様子をニュース映画で見ており、落ちた遺体が何十メートルも弾むように見えた凄絶な光景をかすかに覚えているという。谷川岳の名は、南麓の谷川という沢と集落の名から付いたとされる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。