安倍晴明の墓と伝わる花見潟の赤碕塔
どんな伝承か
鳥取県東伯郡琴浦町赤碕の花見潟墓地に立つ赤碕塔は、安倍晴明の墓と伝えられてきた。宝塔と宝篋印塔を混ぜた独特の形で高さ三・二五メートルほど、鎌倉時代末期の製作とみられるから、寛弘二年に没した晴明とは三百年ほどの隔たりがあり、晴明の墓である可能性はまずない。墓地の東端は小字を鉢屋屋敷といい、山陰独特の被差別民ハチヤの居住地跡である。彼らは空也ゆかりを称して鉦や鉢を叩いて回る念仏集団で、石工や竹細工にも従事した。中世には陰陽師もハチヤも賤視される職人であり、両者を重ねたところからこの伝説が生まれたのではないかという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。