外国人使節が書き留めた縁切り絵馬
どんな伝承か
幕末に来日したスイスの遣日使節エーメ・アンペールは、板橋の榎に掛けられた小絵馬を書き留めている。彼によれば、それは不幸な家庭のために捧げられる木だという。夫婦の仲がうまくいかなくなったとき、相手に知られぬようこの木のもとを訪れ、別れたいという意思を示す。するとやがて何の障りもなく別離が果たされる。願いがかなえば、恩を重んじる夫が、男女が背を向けて地にうずくまる図を描いた額を幹に掛けるのだ、と外国人の目には映った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
西郊民俗 縁切り榎(西郊民俗シリーズ・昭和中期~後期(推定1960年代~1970年代))
本書は東京都板橋区に存在した縁切り榎を中心とした江戸時代から現代に続く民間信仰の全容を描いた民俗学文献である。縁切り榎は旧中山道板橋宿の樹齢古い榎の木で、「縁つきいやの坂」という語呂合わせと、富士講中興の祖食行身禄が妻子との縁を切った場所という伝説により、男女の悪縁を断つ霊験があるとされた。樹皮の粉末を別れたい相手に飲ませるまじないが実践され、絵馬奉納も行われた。皇女の婚礼行列もこの地を避けて通行した。