西の対の妃に通った明石の大蛸
どんな伝承か
昔、都の西の対の妃が明石で静養していたころ、明石の海に海坊主が出るようになった。妃に魅入られて通う大蛸だと噂され、浦の人々はそれを妃の「おもいもの」と呼んだ。淫行を噂する者は捕らえられて海へ叩き込まれたという。やがて妃が大蛸の子を宿したとの噂が都に届き、杜陰の納言と弓の名手箏の中伴が明石の屋形へ下った。ある夜、屋形へ伸びてきた巨大な蛸の脚を見つけ、中伴が沖の大蛸の両眼を射抜き、郷士浮巣三郎左衛門が脚の一本を斬り落として退治した。ところが翌朝、妃は明石の海に身を投げ、亡骸はついに上がらなかった。退治の計略が今の蛸壺漁の始まりだとする異伝もある。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
講座日本風俗史別巻 妖異風俗((講座日本風俗史 別巻)・日本風俗史・民俗)
『講座日本風俗史別巻 妖異風俗』は、『講座日本風俗史』の別巻として、複数の執筆者が妖しく異様な風俗を論じた巻である。淫祠と性の祭礼、戦後の新興宗教、性にまつわる迷信、妖術・忍術・奇術、憑きものと特殊家系、心霊術と催眠術、異類との婚姻、性と怪異の関わりを、古典の随筆や各地の報告、事件の記録から取り上げる。九つの章に分け、終章「日本妖異風土記」では関東から九州・沖縄までの怪異譚を地方別・県別に掲げる。