丸ビルを裂いたX字の亀裂
どんな伝承か
丸の内へ入った著者が東京駅前で目を疑ったのは丸ビルだった。壁面にX字の形をした亀裂がびっしりと走り、今にも崩れ落ちそうに見えた。九階の精養軒で昼食をとっていた者たちの話では、建物が高いほど揺れは激しく、棚に並んだビール瓶や酒瓶がヒュッと音を立ててテーブルまで飛んできたという。天地が滅びるのかと思ったと彼らは語った。ビルの前の通りには幅三メートルほどの地割れが延々と続き、自動車では越えられず、著者は堀端づたいに大きく回り道をするほかなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私の心霊術(長田幹彦・1955年(昭和30年))
『私の心霊術』は、長田幹彦が昭和三十年に著した心霊研究の随筆集である。死後に残る霊や地獄・極楽をめぐる考えを述べ、熊本の家系や安達謙蔵との交わり、東京放送局の文芸顧問だったころの回想、霊友会など戦後の新興宗教への批判、前著『霊界』への反響と自らの信仰を語る。「心霊科学の来世観」「霊界の構造」「ぼくの信仰」などの章からなり、末章「ある霊媒の生態」では霊媒服部との実験とそのトリックの顛末を描く。