三角屋敷で死を選ぶお袖と直助
どんな伝承か
第四幕は深川三角屋敷の場と寺町孫兵衛の場からなる。三角屋敷では、お岩の妹お袖が直助と夫婦として暮らしていた。そこへ、死んだと思われていた前の夫佐藤与茂七が、幽霊ではなく正真正銘の生身の姿で現れる。お袖は、移り変わる我が身の因果を嘆き、屏風の内で行燈を吹き消して、二人の男の願いを受けて死んでいった。直助もまた、お袖が実の妹であったことを知り、畜生道の交わりを恥じて自害する。三角屋敷とは深川万年町にあった直助長屋のことで、最も下等な売女長屋であり、三角形の地所にあったのでそう呼ばれたという。
原典より
三角屋敷とは、深川万年町にあった直助長屋のことで、当時の最下級の売女長屋であった。—— 日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路)
『日本の幽霊たち――怨念の系譜』は、阿部正路が書きおろした日本文学の幽霊論で、刊行は日貿出版社が手がけた。『竹取物語』『源氏物語』『平家物語』などの物語、『日本霊異記』から『遠野物語』『聴耳草紙』に至る説話、能と歌舞伎、さらに三遊亭円朝・泉鏡花・森鴎外・小泉八雲らの近代の作品に現れる幽霊をたどり、怨念の系譜として読み解く。第一章で幽霊の時・季節・姿・場・目的を論じ、終章で稲生屋敷の物怪や百鬼夜行など幽霊の周辺に及ぶ。