空の箱で試された千里眼
どんな伝承か
千里眼の実験をめぐる論争のさなか、藤理学士は透視を手品として葬ろうと躍起になっていた。あるとき彼は、牛込に住む千里眼の候補者阿萬利を実験所へ呼び寄せ、箱をひとつ差し出して、中に入っている物を試しに透視してみろと迫った。阿萬利は一心不乱に念じたが中身は定かにならず、その旨を申し出ると、藤は得意げに蓋を取り払い、何も入ってはいないと言い放ったという。空の箱で人を試すこのやり方に阿萬利の友人たちは憤激し、演説会を開いて責めようとした。著者は、藤がこれで虚験家の汚名を得たと記す。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊哲学の現状(高橋五郎・1919年(大正8年))
『心霊哲学の現状』は、高橋五郎が大正八年に著した心霊研究の概説書である。英国のロッジが戦死した子レイモンドの霊と交わした冥界通信をはじめ、欧米の交霊術と霊媒の実例を訳して紹介し、日本の催眠術と千里眼の流行、御船千鶴子・長尾郁子の事件、霊光や念写までを論じる。篇と章に分け、心霊哲学とキリスト教、クリスチャン・サイエンス、淘宮術との関係や、太霊道など国内の霊術諸派も取り上げ、ところどころに評註を添える。