指籠を破って消えた理八
どんな伝承か
陸奥の守山領、現在の福島県郡山市の記録簿『御用留帳』には、一七四五年(延享二)の事例として、指籠すなわち座敷牢への監禁にまで発展した一件が載る。当事者の理八は年貢を納めることができず気苦労したためか乱気・狂気となり、狐付の様であるとともに、平生と打って変わった様子で家に難儀をかけるようになった。兄は病気の母の看病や農業で忙しく、親類も昼夜の番はままならない。色々療治しても直らず片時も油断ならないので、是非なく縄で手を結え、正気になるまで指籠に入れておきたいという願書が代官所に出されて認められた。理八は指籠に入れられた二日後、それを破って欠落してしまう。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶(川村邦光・1989年(平成元年))
『幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶』は、川村邦光が一九八九年に著した近代日本の民衆の心性をめぐる論考である。明治の「血税一揆」の流言、トラホームと〈迷信〉、狐憑きと精神医学、「脳病」「神経病」、座敷牢と精神病者監護法、芦原将軍や出口なおの神がかり、祖先教と靖国の霊魂の管理を、新聞記事や医学書、調査報告から読み解く。はじめにの後に三部と終章「近代日本と霊魂の行方」を置き、あとがきで結ぶ。