放火の疑いで牢に留められた出口なお
どんな伝承か
初めて神がかりした翌年も、出口なおは断続的に神がかりを継続させていた。昼には紙屑買いなどの商売をし、夜には水垢離をとって神と大声で語り合い、「能の舞」を舞い続けた。さらには神から命じられて「乞食の真似」をして近隣をさまよった。この時期、なおは「今のうちに改心致さんと、何処に飛火が致そうやら知れんぞよ」と大声で怒鳴っていたため、近隣の者は「狐憑者や狸憑者の中には、能う放火をして喜ぶのがある」と語り合って警察に通報した。なおは放火の嫌疑を受けて警察署に拘引され、新築の牢に留置されたのである。
原典より
この時期、なおは放火の嫌疑を受けて、警察署に拘引され、新築の牢に留置されている。—— 幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶(川村邦光・1989年(平成元年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶(川村邦光・1989年(平成元年))
『幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶』は、川村邦光が近代日本の民衆の心性をたどった論考で、あとがきは一九八九年十二月の日付である。明治の「血税一揆」の流言、トラホームと〈迷信〉、狐憑きと精神医学、「脳病」「神経病」、座敷牢と精神病者監護法、芦原将軍の誇大妄想と出口なおの神がかり、祖先教と靖国による霊魂の管理を、新聞記事や民話、医学書、調査報告から読み解く。はじめにの後に三部と終章を置き、あとがきで結ぶ。