焼き場の声と背中にくっついた六文銭
どんな伝承か
昔、ある村に爺さんと婆さんが暮らしていた。町へ買い物に出た爺さんは、帰りにどうしても通らねばならない焼き場で「フルイツコウカ」と呼ぶ声を聞き、恐ろしくて何も答えずに逃げ帰った。話を聞いた婆さんは意気地がないとなじり、もう一度行ってとりつけと言ってこいと爺さんを追い出した。しかたなく焼き場へ戻った爺さんが、負えるものならとりついてみろと言い返すと、急に体が重くなった。急いで家に帰ると、背中に六文銭が固まってくっついていた。死人に持たせた六文銭が寄り集まったもので、老夫婦はそれで楽に暮らしたという。
原典より
これは死人に持たせてやった六文銭がかたまってお金のかたまりになったのじゃそうな。—— ダムに沈む ―香川県長尾町前山地区民俗誌(武田明・高橋克夫ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
ダムに沈む ―香川県長尾町前山地区民俗誌(武田明・高橋克夫ほか)
『ダムに沈む ―香川県長尾町前山地区民俗誌』は、武田明・高橋克夫らが香川県長尾町の前山地区の暮らしを記した民俗誌である。祭りの項に続く「口承文芸」の項を昔話と伝説・世間話に分け、昔話は星越・大多和・譲りはの古老の語りを話者の名を添えて土地の言葉のまま書きとめる。伝説と世間話には中津・大多和・ゆずりはなどの天狗石や川女郎、首切れ馬、桂洞法印の化物寺の話を収め、項の末尾に執筆者の名を記す。