成永火葬場の隠亡による人油の密売
どんな伝承か
明治四十一年三月、三重県三重郡常盤村の成永火葬場の隠亡が、死人の骨粉や脂を採って密売していた事件が発覚した。同火葬場は四日市にあり、犯人は志摩郡国府村大字国府の小林助五郎六十九歳と実弟の広松六十二歳で、七年前からこの火葬場の隠亡に雇われ、幾百とも知れぬ死人の衣類を剥ぎ取り、脳漿を抉り出し、骨粉を製して万病に奇効ある霊薬と称し、四日市河原町の万古職長谷川くま五十一歳の手を経て人油一合五十銭で密売していた。販路は広く津市辺まで及んだ。両人は自らも人油を嗜み、飲まぬと体の具合が悪いといって常に小瓶を離さなかったという。
原典より
三重県三重郡常盤村成永火葬場の隠亡が、死人の骨粉及び脂を採り、密売したる件あり、…—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。