垂坂に生まれた一くわとひともっこ
どんな伝承か
垂坂の北方、丘の中腹に天台宗の観音寺という古刹がある。その西北に接する丘陵を里俗に金山と呼ぶ。元三大師がこの寺に住したのは五年で、その間、若田某という修験者が大師の弘法を妨げた。若田が鋤で一杯の土砂を野原に盛ると、たちまち生長して塚となった。里人はここを「一くわ」という。大師はこれを見て一畚の土砂を近くの野続きに盛らせると、これも生長して大きな塚となり、上に碑石が建てられた。ここを「ひともっこ」という。大師は、垂坂の里は地が良く一夜で大都になると言い、宵から工事にかかったが、夜明け前に若田が天の邪鬼と化して鶏の鳴きまねをしたため夜が早く明け、工事は完成しなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。