小神様を巡る頭屋元と直会の名残
どんな伝承か
前山のこの地区でとくに特色があるのは、祭りの当日、それぞれ家の近くの小神様へ御初穂米をお盆にのせて供えることである。宮司と頭屋元が下の方から祓ってまわり、そのとき頭屋元は袋を用意して御初穂米を集めてゆく。御神酒は頭屋元が一升びんをさげて次々と小神様に供えるが、祓いが終わるとその場で別の空びんに回収する。供えた餅も同様に回収し、御神酒と餅は頭屋元の家で氏子の人々に分けていただく。御初穂米は宮司に賜る。ここには直会の素朴な形のなごりがとどめられている。この部落では小神さんにまじって地蔵さんにもしめなわを張り、御初穂米を供えて祓う古くからのしきたりがある。木星越地区は戸数十一軒で、毎年一軒が頭屋になり、二ヶ所の山の神の春秋二回の祭りを世話する。
原典より
御神酒と餅は、頭屋元の家で氏子の人々に分けあっていただく。—— ダムに沈む ―香川県長尾町前山地区民俗誌(武田明・高橋克夫ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
ダムに沈む ―香川県長尾町前山地区民俗誌(武田明・高橋克夫ほか)
『ダムに沈む ―香川県長尾町前山地区民俗誌』は、武田明・高橋克夫らが香川県長尾町の前山地区の暮らしを記した民俗誌である。祭りの項に続く「口承文芸」の項を昔話と伝説・世間話に分け、昔話は星越・大多和・譲りはの古老の語りを話者の名を添えて土地の言葉のまま書きとめる。伝説と世間話には中津・大多和・ゆずりはなどの天狗石や川女郎、首切れ馬、桂洞法印の化物寺の話を収め、項の末尾に執筆者の名を記す。